―「数字のマジック」の裏側にあるもの―
2025年度の公立中高一貫校入試が幕を閉じ、埼玉県内の各校では、ホームページ上で2次選抜の結果が発表され、最終的な倍率も明らかになっています。
一見すると、「今年は受検者が減ったな」と感じる方が多いかもしれません。実際、数字だけを見れば、2024年度に比べて軒並み減少傾向にあるのは事実です。しかし、ここには見逃せない“数字のマジック”が潜んでいます。
昨年度(2024年度)の1次選抜日は1月13日・14日と、難関私立中学との日程重複がほとんどありませんでした。そのため、私立中学を本命にしている受験生でも、「念のために公立も受けておこうか」と、気軽に挑戦することができました。
ところが今年度(2025年度)は事情が異なります。選抜日は1月11日・12日。これはちょうど、開智中学校や栄東中学校など、埼玉県でもっとも受験生を集めている私立校と重なってしまったのです。結果、公立中高一貫校を“滑り止め”や“保険”として受ける層の多くが、受検自体を断念したと考えられます。
なお、各校の具体的な受検状況は、以下の(表1)~(表4)をご参照ください。
(表1)【さいたま市立浦和中学校】
男子 | 1次選抜 | 2次選抜 | 受検倍率 | ||
受検者数 | 合格者数 | 受検者数 | 合格者数 | ||
2025年度 | 241名 | 120名 | 95名 | 40名 | 6.0倍 |
2024年度 | 303名 | 120名 | 87名 | 40名 | 7.6倍 |
女子 | 1次選抜 | 2次選抜 | 受検倍率 | ||
受検者数 | 合格者数 | 受検者数 | 合格者数 | ||
2025年度 | 248名 | 120名 | 89名 | 40名 | 6.2倍 |
2024年度 | 347名 | 120名 | 88名 | 40名 | 8.7倍 |
(表2)【さいたま市立大宮国際中等教育学校】
男子 | 1次選抜 | 2次選抜 | 受検倍率 | ||
受検者数 | 合格者数 | 受検者数 | 合格者数 | ||
2025年度 | 293名 | 200名 | 141名 | 80名 | 3.7倍 |
2024年度 | 316名 | 200名 | 151名 | 80名 | 4.0倍 |
女子 | 1次選抜 | 2次選抜 | 受検倍率 | ||
受検者数 | 合格者数 | 受検者数 | 合格者数 | ||
2025年度 | 321名 | 200名 | 143名 | 80名 | 4.0倍 |
2024年度 | 409名 | 200名 | 147名 | 80名 | 5.1倍 |
(表3)【川口市立高等学校附属中学校】
1次選抜 | 2次選抜 | 受検倍率 | |||
受検者数 | 合格者数 | 受検者数 | 合格者数 | ||
2025年度 | 348名 | 197名 | 191名 | 80名 | 4.4倍 |
2024年度 | 361名 | 180名 | 178名 | 80名 | 4.5倍 |
※2025年度から男女の定員が廃止となったため2024年度も男女の合計で掲載。
(表4)【伊奈学園中学校】
1次選抜 | 2次選抜 | 受検倍率 | |||
受検者数 | 合格者数 | 受検者数 | 合格者数 | ||
2025年度 | 372名 | 204名 | 169名 | 80名 | 4.7倍 |
2024年度 | 395名 | 206名 | 178名 | 80名 | 4.9倍 |
したがって、**「公立中高一貫校の人気がなくなった」「レベルが下がった」**といった単純な見方で今年の数字を捉えるのは、誤解を招く危険があります。数字の背後にある入試日程や受験戦略の変化に目を向けることが大切です。
さらに、今後の展望にも注目が必要です。埼玉県内の公立中高一貫校では、例年、1次選抜は1月第2週の土日に行われる傾向があります。この流れを踏まえると、2026年度の入試も1月10日(土)や11日(日)に実施される可能性が高く、今年と同様に難関私立校との日程重複が避けられないと考えられます。
加えて、川口市立高等学校附属中学校が2026年度から全県募集となる予定であることも見逃せません。これにより、同校の競争率がさらに高まるとともに、全体の受検状況にも影響を与えることが予想されます。
例年どおりであれば、5月下旬から6月にかけて、次年度入試の募集要項の概要が発表されます。今年は例年以上にその発表が注目される年となるでしょう。